2011年の西コース改造について、西コースの第一印象はいかがでしたか?
リース・ジョーンズ氏:最初の印象としては、井上誠一氏による各ホールのルーティングやレイアウトがとてもよくできているので倶楽部の目標を達成できるのではないかと思いました。スペースの面からみても2グリーンではなく1グリーンにすることで、21世紀型のより良いコースにできることは見えていました。
当時、改造のコンセプトはどのようにお考えでしたか?井上氏によるオリジナルデザインをどのように改良したのでしょうか? また、トーナメントコースに適した改良のポイントはどこだったのでしょうか?
リース:各ホールの距離を長くして、すべてのバンカーの位置を変え、チャレンジングなグリーンに対してプレーできるようにグリーンをデザインし直しました。通常のプレーに対応するために、グリーン周りの長いバンカーショットをなくそうとしました。一方、上級者に挑戦してもらうためには十分なスペースがあったので、コースを長くしました。これらの改造を行った後、日本のプロトーナメント史で見ると、アジアパシフィックオープンゴルフ選手権(注:2016年開催)にふさわしいコースであることが証明されました。
改造に際して、西コースの植栽に手を加えたことがあれば教えてください。
リース:設計家として、樹木はレイアウトを構成する不可欠な要素であると考えていますので、フェアウェイに沿った樹木はほとんどそのまま残しました。しかし、ゴルフコースの変化に対応し、また健全な芝の生育環境を確保するために、既存の植生を調整しなければならない箇所もありました。また、コースのいくつかのエリアには植樹を行いました。例えば、13番ロングホールの左サイドや右サイドの部分です。また、いくつかのホールでは、サクラとハナミズキの混植を行いました。
東コースは、過去にC.H.アリソンが改修していますが、西コースを改造した際、東コースのことは意識されましたか?
リース:茨木の東と西、二つのコースはどちらもよく考えられていて、いい意味で違っていてとても面白かったです。東コースはアリソンが改修を手がけたことで、完成度が上がりました。私たちは、倶楽部の改造委員たちとともに東コースを何度も見たりラウンドしたりしました。その結果、会員が好むデザインの特徴や要素をよく理解することができ、西コースの景観のデザインを展開するのに役に立ちました。
当倶楽部では2023年に第88回日本オープンゴルフ選手権が開催されます。茨木カンツリー倶楽部での日本オープンは東西合わせて6回目となります。設計者の視点から、西コースの日本オープン観戦の面白さについて、ファンにアドバイスをお願いします。
リース:これまで私が改造したコースでは、全米オープンが14回、全米プロゴルフ選手権14回、ライダーカップ6回の競技が開催されてきました。その意味でも、今回の日本オープンが開催される西コースの設計に携われたことはとてもエキサイティングなことです。
観客の視点から見ると、この西コースはパー3のホールで選手を見るための優れたスポットがいくつもあります。また、9番ミドルホールは、右サイドの池で守られたグリーンに向かってショットする難しいホールです。
そして、16番ミドル、17番ショート、18番ロングの終盤3ホールでは、選手たちが勝負を賭けたショットをする場面が見られるでしょう。18番のフィニッシュホールは2打目の落としどころとグリーン手前に池があり、リスクとリターンがドラマチックなパー5です。過去に当クラブで開催された試合でも、このホールで多くのバーディや時にはイーグルが生まれ、より上位の結果をもたらしました。
前回、西コースで開催されたメジャー大会のように今回の日本オープンも最後の最後で勝者が決まるような予感がしています。
リース・ジョーンズ氏プロフィール
1941年生まれ。父はゴルフコース設計家として著名なロバート・トレント・ジョーンズ、兄も設計家のロバート・トレント・ジョーンズ・ジュニアというファミリーに生まれ、自らもこれまでアメリカや各国で200あまりのコースの新設、改造設計を手がけた。その中には全米オープンや全米プロ、ライダーカップが開催されるコースも多く、「オープン・ドクター」とも呼ばれる。茨木カンツリー倶楽部では井上誠一氏設計の西コースの改造を2011年に行った。その西コースで日本オープンゴルフ選手権が2023年10月に開催される。